本年の「大学入学者選抜大学入試センター試験」(センター入試)国語(大問2)に牧野信一の作品『地球儀』(大正12年。文芸春秋)が出題され、「滅多なことでは出題されない大物」小林秀雄の出題(大問1。随筆『鍔』)とあわせ、話題になりました。
「マキノファン」を自称する我々や、作家の生地小田原の人々も一驚したのですから、「センターの陣」に臨んだ多くの受験生の皆さんは「牧野信一って誰?」「『地球儀』って…」などと思われたのではないでしょうか?
そこで「受験生が見た・感じた『地球儀』の出題」について知りたいと思い、都内有名私立高校に在籍する2名の俊優に感想を寄せていただきました。謹んで原文のまま掲載させていただきます。
2013年度大学入試センター試験 国語第2問『地球儀』についての感想 (Mさん)
まず試験が始まって問題を眺めた時点では、その長さが目立ったが、読み始めると会話文が多いため案外サクサク読める。『地球儀』全文を読み切って解くのは時間的に容易いとは言わないものの、見た目ほど無理ではない。
内容把握について。「私」の書いた短編まで。全文が掲載されているのでリード文がないのは当たり前だが、状況が分かりにくい。特に「私」の父については、特に放蕩して家を放っているのがどの程度なのか、掴みにくく試験中は焦った。(僕の思い込みかもしれないが、大抵のセンター小説においてはリード文か直後辺りに解説があるので、初めはそう思って読み進めていた。)
短編については、父の状況が把握できると主に「純一」の心情が分かりやすく、かつ「私」の父に対する感情も初めてここで読み取れた。これのおかげで短編より後の方はサクサク読めたのだと思う。短編自体も長いから省いて欲しかった、という友人もいたが、これを省かれたら試験の時間中に本編を理解するのは難しかったのではないかと思う。
物語の内容としては個人的に好きなのだが、(友人も言っていたが)受験生としてはセンターで扱ってほしくない類の文章であった。(文章の種類が変わったから狼狽えた、と言うべきか?)
2013年度大学入試センター試験 国語第2問『地球儀』についての感想 (Nさん)
2013年のセンター試験国語[2]の問題は、小説の全文が問題文として掲載されるという珍しいパターンの出題であった。この出題形式は、確かに「問題文の範囲で物語が完結している」という点で、受験生にとって有難いものだ。
しかしながら作中に使われている特徴的な表現技法、その中でも「小説内小説(短編)」は多くの受験生を戸惑わせるものであっただろう。純粋な読み物としての小説であれば、作品に深い味わいを持たせる要素の一つとなるものであろうが、試験問題の文章としては、受験生の立場からすると余り嬉しいものでは無いのである。
また、「スピンスピンスピン…」「シイゼエボオイ、エンドゼエガアル」等癖のある言い回しも、以前の年度のセンター試験における「ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ・ネ」(2011年)、「たま虫ですよ!」(2012年)などを髣髴とさせるものであり、このような表現に気を取られてしまって肝心の部分を読み落としてしまった受験生も少なくないものと思われる。
いずれにせよ、この文学作品の出題は受験生にとってはある種の衝撃であっただろう。昨年度のセンター試験「国語」と比較して、全体200点満点中で16点程度も平均点が下がってしまったという事態にも、頷けるものがある。